SOU・SOU日記 / スタッフがお届けする日記
“お茶室探訪/寺田 由”
この夏、東京・六本木の森美術館で開催されていた『建築の日本展』。
学生さんが細部に至るまで再現した『待庵』が話題になりました。
私も上京した折に2度ほど見学し、大興奮しながらその空間を体感いたしました。
お茶室の原型である国宝『待庵』は京都・大山崎にありますが、
そういえば・・・と、訪れたのが京都・大徳寺の塔頭、瑞峯院(ずいほういん)にある『平成待庵』です。
こちらはご縁あって30年ほど前に祖父が建てさせていただいたお茶室です。
室内に一歩入ると、思わず背筋がピンと伸びる漆黒の世界。
国宝の『待庵』の壁は経年劣化によって黒く変色しているので、
それを再現するために試行錯誤の末、土壁の材料に煤や炭を混ぜたそうです。
「建てた当初はもっと黒かったものが、30年経ってようやく落ち着いてきた。」
と、お寺のご住職様がおっしゃられていました。
こちらのお茶室も電気などの照明器具はなく、
障子を通して陽の光が室内に入り、自然と点前座に視線が向きます。
最初は黒い壁に圧倒されましたが、光と影と静寂が凛とした空気感を生み出し、
思わず時を忘れてしまうほどの居心地の良さ。
作為的なものではなく、質素で簡素、その空間の中に身を置くことでを感じる「一体感」は
言葉では説明し難いですが、千利休はどのようにしてこの空間を作り出したのだろう・・・
果たして茶室の完成形はなんだろう・・・。
もっと色んなお茶室を見てみたい!と感じました。
『平成最後の~』という言葉をよく耳にするこの頃ですが、
このお茶室が『平成』から先の時代をどのように経ていくのか・・・
美しい枯山水のお庭を眺めながら『茶室』に思いを馳せた1日となりました。