SOU・SOU日記 / スタッフがお届けする日記
“I Love Youの訳し方/李 瀟瀟”
「日本人って、I Love Youを言わへんな、なんでやねん!?」
とある日、朝礼でチェルシー氏が言いました。
確かに、英語の"I Love You"に相当する「愛している」という言葉は
ドラマか流行歌の中にしか存在しなうように感じております。
恥ずかしがり屋の日本人が「愛している」などと口にしたら、
言った方も言われた方も恥ずかしいでしょう。
ですが、口にしないではなく、他には日本人らしい表現で
"I Love You"を言っているのではないかと思います。
100人の作家による100通りの"I Love You" の訳し方を収録した本を見つけました。
■情熱的に
「神様の名を呼ばね時は
お前の名を呼んでいる」
八木重吉『床上独語』より
■感傷的に
「君に似し姿を街に見る時の
こころ躍りを
あわれと思え」
石川啄木『一握の砂』より
■個性的に
「でも、好きって言いたくなかったの。
たぶん、それよりずっと好きだったから」
村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』より
■狂気的に
「先生、首をしめてもいいわ。うちに帰りたくない」
川端康成『みずうみ』より
■浪漫的に
「もう青春は終わったと思っていたのに」
有吉佐和子『悪女について』より
もっともロマンチックな言語は日本語である!!
ストレートに突き刺さる表現もあれば、歯の浮くようなキザな台詞もありました。
しかし、ひとつとして同じ言葉はありません。
奥ゆかしい!
SOU・SOUメンバーにも自分なりの"I Love You"を考えて頂きました。
"I Love You"=「あなたに まつわる すべてを 想う」
情熱的な大和田さん訳!
"I Love You"=「そばに 来て」
浪漫的な福田さん訳!
まるでそれにこたえるような中西さんの訳ーー
"I Love You"=「あなたの心に寄り添いたい」
しばらく、静まりかえった時間が流れている。
少しハラハラしているうちは、
沈黙の時間をいっそ楽しんでみるのもいいでしょう。
やがてその沈黙は安心へと変わってしまうから。
"I Love You"=「ごちそうさん」
たびだち「あの人との、ひとり言」コンクール受賞者の澤田さん訳。
思わず泣いてしまいました。。。
"I Love You"=「一緒に笑えるのっていいよね」
増本さん訳、微笑ましい光景が目に浮かびますね。
"I Love You"=「富士山の頂上で 一緒に 夕日を 見たいです」
昨年に富士山制覇してきた荒武さん訳。
朝日ではなく、「夕日」を。
オレンジ色の温かい光に包まれ、
そして陽が落ちて星空に変わるその瞬間、
愛しい人と一緒に見たい気持ち。
"I Love You"=「あなたの 写真を 撮りたい」
カメラ小僧内村さんが大切な人への気持ちを写真に詰め込みたいようです。
"I Love You"=「あなたにとって 私が心穏やかになれる居場所 でありますように」
色部さん訳、個性の光る一節ですね。
恋は人間の創作意欲をかき立てるものなのでしょう。
"I Love You"=「今年もまたご一緒に九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。」
豆越さん訳は星新一が年賀状に書いていた文言で、
それは地球が太陽のまわりを一周する距離です。
とても壮大でかっこいい!
「よし、恋をするぞ」という気持ちです。
"I Love You"=「いつもありがとう」
黒澤さん訳。
シンプルな日本語、素朴に。
シャレもなければ、世辞もない。
淡々として水の如く、ずっとそこにある何かのように。
好きです。
普段何気なく使っている日本語が、今よりもっと好きになるのでしょう。
"I Love You"
あなたならどう訳しますか?
8 件のコメント
いつも楽しく読ませていただいています。
今回の記事はあまりにも素敵で感激しました。 英語のloveということばの中に込められる深い部分はわからないのですが、私も「愛してる」ということばは使えません。 主人や両親に対してあえてそれに近いことを言うなら「生きていく為にはあなたの存在が私には不可欠です そばに居させてくれて そばに居てくれてありがとう」になるかな。
漢字の「愛」もそもそも外来で、日本人が本来持っている何かを慕う感覚とまったく同義なのか、というところにまで思いが到ってしまいました。
ことはで簡単に著せないことの奥深さ、ことばで著さないことの物足りなさを考えさせられる素晴らしい記事でした。 ありがとうございました。
こずえ様
コメントありがとうございます!
「愛」という漢字の成り立ちですが、「胸がいっぱいになるほどの切なさ」という、気持ちが苦しい状態を表しているのだと言われますね。
しかし、日本人のlove表現はもっと豊かで色んな気持ちが入っていると感じております。
こずえ様なりの「愛している」表現、とっても素敵で心がほっこりしました!
ニーハオ!寒い季節に「愛」をテーマにしたお話、なんて素敵なのでしょう。書かれていたようにこの国では、愛情表現をストレートにしないかも知れません。ですが、食や住にそうした、エキスは隠されている気がします。例えば鍋の文化。同じ鍋を突っつきあう。古民家の囲炉裏。共有することで愛を育む、very Japaneseだと思います。中国は大変食文化が豊かですから、北では餃子、南では小籠包を囲んで育む愛が頭の中で描かれます。今回もほっこりしたお話しを謝謝!
Xiao pen様
コメントありがとうございます。
日本の鍋文化のお話し、大変勉強になりました。
お鍋、餃子、小籠包、どちらも家族や友人で囲んで体も心も温まる冬の「愛」ですね。
一衣帯水の隣国である日本と中国は地理的な距離は近いが、
心理的な距離は近づいたり離れたりするのではないでしょうか。
それで生まれた文化的な違いがすごく面白く感じており、今後も色々と考察していきたいと思います。
宜しお願い致します。
瀟瀟さん、素敵な日記、ありがとうございます。読んでいて何故か涙が出てしまいました。英語圏に住んでおり洋の東西を問わず愛の表現に優劣はないと思ってはいますが、この日本語の奥ゆかしさ、そして持っているパワーのなんたる強さ深さ。改めて言霊の国の素晴らしさを再認識させてくれるあなた方がいるSOU・SOUはだから素敵なんですね。
シアトルっ子様
コメントありがとうございます!
英語圏に短期間しか滞在したことがないのですが、その国のおおらかさ、フレンドリーな人々やのんびりとした生活観も、私は大好きです。
ですが、日本に住んでみると、人々の感性の繊細さと豊かさに毎日感激しています。
これからもこの言霊の国の素晴らしさを吸収しつつ、自分の感性を磨いていきたいと思います!
今後とも宜しくお願い致します!
ん~。いつもながら素敵な記事ですね!
私たちのことばをなかなかストレートに表現する英語などに訳すのはしばしばとても難しく感じます。
日本語の良さを改めて感じることができる素敵な記事をありがとうございます♪
anzai様
いつものご愛読とコメント、ありがとうございます!
日本語はホントウに知的で優雅な余韻を残す言葉ですね。
今後共その表現の豊かさと美しさをいっぱい教わって頂きたいと思いますので、
どうぞ宜しくお願い致します。