SOU・SOU日記 / スタッフがお届けする日記
“最近の読み物・見もの”
最近、こちらを見て。
映画館で最初から最後まで泣き通したのは、初めてです。
「ふたたび?SWING ME AGAIN」という作品なのですが、
ハンセン病で50年間ぶりに療養所から戻った主人公が、昔組んでいた
ジャズバンドの仲間を、初めて会った孫と一緒に訪ね歩く…
大まかなあらすじはこうですが、その作中には、
悲しい・寂しい・不安・嬉しい・悔しい・あたたかい…様々な気持ちの
それぞれの涙が流れます。本当に良い映画です。
そして、最近読んでいる。
「潮騒」三島 由紀夫著
三島作品では、読みやすい。というか、通り越して異色とまで言われる位、
ド恋愛小説なのです。が、やはり言葉が美しいなァと感じずにはいられません。
-彼は待った。少しの不安もなしに、自分の黒いセエタアの
ほうぼうの綻びに、暇つぶしの指をつっこんで拡げてみたりしながら、
若者は徐々に温まってくる体の感覚と、戸外の嵐の声にばうっとして、
疑わない忠実さそれ自体が与える幸福感に漂っていた。
持合わせのない想像力は彼を悩まさなかった。そして待つうちに、
膝頭に頭をのせて眠り込んだ。-
舞台は伊勢湾の入り口にある「歌島」(現在は神島)。
聞いた事のある場所の名前もちらほらと出てきます。
とにかくそこで育った主人公の青年と、数年ぶりに島へ帰ってきた女の子との
恋愛作品です。
上の文章は、まだ2人がくっつく前ですが、なんとなくお互いに決めていて
今度落ち合おうと約束して、主人公が女の子がやってくるのを
待つ場面です。
心がすっきりと洗われるような文章と、やはりどきどきとして
本当に恋愛というのは、どんなに昔の作品でも、こういう鮮烈な
感情を沸き立たせるのだなァと思います。
皆さん、今年はどんな物語や映画に出会ったでしょうか。
(尾崎)