一日一駄話 / SOU・SOUプロデューサー若林剛之によるたわいもない事
“茶室彼是(ちゃしつあれこれ)【63】”
数寄屋大工一家の箱入り娘、寺田由のコーナーです!
朝晩と過ごしやすくなり、窓を開ければ虫の鳴く声が心地よいこの頃です。
今や電子書籍にモバイルコミックが主流の時代ですが、私はもっぱらの紙♡ラバー。
読みたい本を探すときは、本棚の奥をゴソゴソと掘り出すのが大好きです。
我が家には祖父が残した本が多く残っています。
建築やお茶に関係する本が特に多く、もはや日本語でも読めない漢字の羅列に目眩を起こしそうな本や、季節の花や道具がレトロなカラー印刷された本まで様々です。
最近、たまたま手に取った本で、気に入ってペラペラと眺めているのがこちら。
「茶のこころ 一日一話」千宗室著
表紙の写真からして歴史を感じるこの本は昭和58年に出版されたもの。
先代の裏千家家元、現在の千宗玄大宗匠がお書きになられた本です。
一日一話ずつを気軽に読めるように、平易な文章で書かれたコラムです。
一つの話に日付がついているので、その日の文章を読んで季節を楽しむのも良し、パラパラとめくって目に止まった記事を読むのも良し。
私はもっぱら後者ですが、せっかくなので本日、8月28日の記事を覗いてみましょう。
一盌のお茶が目の前に出た場合、自分が先に座っているのだから、隣の人に何もわざわざ「お先に」ち言わなくても、さっさと飲めばいい、お点前をしている人に「お手前いただきます」「ありがとうございます」と、挨拶しなくたっていい、その人は点てるためにそこでお手前をしているのだから、という論法が出てくるかもしれません。しかし、それは自分勝手であって多くの人と一会をしようと思うなら、そこにおいてお互いに譲り合っていこうという気持ちの良い雰囲気を作らなければなりません。
隣の人より自分が先に飲むのですから「お先に」と、そしてお手前をしていただいた人には、自分のために、これほどまで色々な道具を媒介にして、湯加減を整え、お茶を点ててくれたのだと、感謝しなければなりません。
※「茶のこころ 一日一話」千宗室 著より引用
もちろん、主たる話題はお茶についてですが、私たちの暮らす俗世に通ずる人生哲学のようにも感じます。
礼儀作法やお稽古の心得、禅の心、自然のこと、人との付き合いについてなど、様々な経験をされてきた大宗匠だからこそのお話し、大切に心の宝物にしておきたい教えやお話も多く、いつ開いても心の拠り所となってくれるような一冊です。
物事の当たり前という傲りや、人に対する思いやりなど幼少期に親から教わるであろう、生きていくための基礎を見失ってしまった時、どうにか心を落ち着けて己の信念と素直な心に立ち戻ることが一服のお茶にはできるということ。
猛スピードで世の中の価値観が変わる中、この約40年前の本の内容は揺るぎない日本人の精神価値を私たちに伝えています。
伝統が物質的なものではなく『人の心』だと言うことの証明でもあります。
ペラペラとめくっては、ふぅーん、なるほど・・・。
と、出てくるのはため息ですが、いつか私の心の中の記憶から大宗匠の言葉が飛び出てくるかもしれません。
さて、皆さんは夏休みの宿題終わりましたか?
そろそろテレビから「サライ」が聞こえてくる頃です。
(こちらも私の伝統!私は毎年サライを聴きながら宿題をしていました。)
夏の終わり、暑さをちょっと名残惜しく思いながら、一服のお茶でどうぞゆっくりとしたひと時を過ごしましょう。
《つづく》
========================================
それでは、また明日。
-------------------------------------------
【今日の合言葉】
「茶室彼是(ちゃしつあれこれ)」
・店舗でお会計時に、〔今日の合言葉〕を言って頂くと、1ポイント差し上げます。
(1日に1ポイントのみの進呈です)
・毎日変わりますので、ご注意ください。
・店舗のみのサービスとさせて頂きます。
あしからず御了承願います。
-------------------------------------------
6 件のコメント
なんか癒されながらも改めて考えさせられる、心に染み入るお話やなぁ…。
私も忙しない日常の中で、いつのまにか「譲る」気持ちが希薄になってたなぁと反省してしまいました…。
私は茶道のことはよく理解らないけど、
日本には「道」という伝統が色々ありますねぇ。
「書」「華」や「香」さらに「剣」「合気」「弓」などなど、それぞれがその精神に則り、古から受け継がれて来たもんです。
私も「書」と「剣」の道に勤しんだことがあり、子供ながらに寺田さんも言いはるように「礼儀作法」や「稽古の心得」を通じて"人としてのあり方"を学んだような気がします。
猛スピードで世の中の価値観が変わると共に「人の心」を見失いがちな時代だからこそ、「どうにか心を落ち着けて己の信念と素直な心に立ち戻ることのきっかけを持つこと」が大切なんやなぁとしみじみと思い直した次第です。
kazu-endlix様
いつも温かいコメントをいただきましてありがとうございます。
今では少し違う意味合いで取られていますが、日本人の「精神論」はきっとこういったところのことを言っているだろうなと感じます。
私もお恥ずかしながら自分の至らなさの言い訳を日々考えてしまっています・・・(これは本当に脳みその無駄遣いだと反省!)
kazu-endlix様が勤しまれていた書道や剣道でもきっと厳しさの中に多くの「心」があたのだと推察いたします。
ひとまず、ゆっくりお茶でもしながらのんびり深呼吸して秋の夜長を楽しみたいですね!
久しぶりの茶室彼是\(^o^)/
『「茶のこころ 一日一話」千宗室著』手に取ってみたく成りました。探してみよう!
社長の一日一駄話も本に成るかな?(^v^)
よっ!様
いつもコメントをいただき、また興味をお持ちいただきありがとうございます。
短くもなく、長くもない文章だと飽きずに読めますね!
一日一駄話だと・・・きっと麺のページが多めです(笑)
今、進んで前に出る人を「積極的」と賞賛されることが多いからか(もちろん決して悪いことではないのですが)、余計に心に響きますね。日本人の美徳、忘れたくないなと思いました。
ちなみに私も書籍は漫画も含め、紙派です。
場所をとる、荷物になる等言われますが、紙ならではの魅力がありますよね!
chabo様
いつもコメントをいただきましてありがとうございます。
本当に、おっしゃる通りですね。
「積極的」や「謙虚さ」の意味や価値がちょっとずつ変化しているような気がします。
それはそうと漫画も紙派とは!
荷物は増える一方ですが、数年後取り出して読む楽しさもあって、これはやめられませんよね!
古い本の印刷も好きですし、語り出すと止まりません(笑)
きっとchabo様もお仲間かとお察しします!