一日一駄話 / SOU・SOUプロデューサー若林剛之によるたわいもない事
“茶室彼是(ちゃしつあれこれ)【58】”
数寄屋大工一家の箱入り娘&SOU・SOU傾衣の看板娘、寺田由のコーナーです!
かつて一度だけ、祖父がグッドデザイン賞を受賞したことがあります。
(京都・光悦寺と新日本製鐵株式会社と共同出品)
伝統建築を継承する数奇屋建築は、現代的なハイカラなデザイン賞とは程遠い印象ですがその際の受賞は
「お寺のチタン屋根」
というもの。
「チタン」と言うと自動車や宇宙開発、医療分野でも使用される金属。
そのチタンを瓦や銅板のかわりに屋根材に使用した、というものでした。
お寺だけではありません、チタンをお茶室の屋根に使用することを祖父は熱心に研究していました。
屋根は常に風雨に晒され厳しい環境下で徐々に劣化していくもの。
建物を傷ませる最大の原因は雨漏りであり、一度、雨漏りをすれば建物の耐久年数はぐっと短くなってしまうことを憂いていました。
数十年ごとに屋根を葺き替えるコストも膨大となれば継承していくことも困難になっていきます。
▲新日鐵住金株式会社 茶室フォーラムの際のパネル展示
《https://www.titan.np-nippan.co.jp/chashitsu_forum.html》
チタン屋根のメリットは長持ちして環境に優しいという点。
銅葺きの屋根と違い、腐食や錆もなく他の材や薬品にも反応しません。
私が驚いたのは、よく見かける銅板葺きの屋根は雨が降ると成分が溶け出し、銅の殺菌力で露地(茶庭)の苔の育成に影響するということ。
露地に瑞々しく茂る苔は何気ない景色の一部ですが茶庭には欠かせないもので、季節や環境に左右されやすい非常にデリケートなものです。
大切な苔の育成に影響するとなれば、屋根を全部チタンに変えれば良いじゃない!
と、なりそうなものですが、そうはできないデメリットもあります。
一番のデメリットはコストがかかること。
チタン屋根の寿命は約200年と言われていますので、その年数分のメンテナンスを考えれば突飛な金額ではないと言われても、自分の代で200年分のメンテナンス代を補うのもなかなか大変なのも現実。
そして、まだまだ実績が少なく近代の製品であるために文化財として認められていないのも今後の課題です。
ですが、これからの茶室の屋根のスタンダードになる時が来るかもしれません。
《つづく》
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それでは、また明日。
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6 件のコメント
ステキな、すごいおじい様ですね!
銅葺きの屋根が苔の育成に影響するとは、相反するもの成ってしまいますね。
おじい様の功績にバンザイ!そして、残していく伝統を。
ありがとうございます。
よっ!様
いつもコメントをいただきましてありがとうございます。
功績などというほど大袈裟なものではありませんが、後々知った興味深い話です!
金属アレルギーなのでチタンはお馴染みの素材ですが、
お茶室の屋根になるとは、驚きです。
お茶の世界は、一見古典的で頑ななようでいて、新しいものを
取り入れる柔軟さもあると思います。何年も先のことや、
環境のことを考えた素材はきっとこれから受け入れられていく
と思います。
コロナ禍の前は、お寺の中にある築百年のお茶室でお稽古
させていただいていました。
それは趣きがあって素晴らしい雰囲気でしたが、やはり傷みが
激しくて、戸を開けるのも一苦労。
雨漏りしたり、虫やヤモリが落ちてくることもしばしば…
屋根が丈夫なら建物が長持ちするというのは納得です。
お祖父様の伝統的建築物への愛を感じて素敵です。
iMary様
コメントをいただきましてありがとうございます。
趣のある素敵なお稽古場でお稽古されていたのですね!
きっと建物の維持費に大変なお寺さんも多いことと思います。
建物を完全なまま残すことも必要ですが、持続可能な形で進化していけばいいですね。
ここ数日、コップの中の嵐に翻弄されて、日常を失っていました。
「茶室彼是」読めてなかった・・と思い出し、今、拝読させていただきました。
200年の歳月に耐えうるチタン屋根!!
伝統への飽くなき挑戦と自分の命より長いスパンへの地球への影響をも考慮するその視点。
コップの中の嵐が静まっていきます。小さいなー・・私・・
寺田さん、ありがとうございます。明日も頑張ります。
はな様
いつもコメントをいただきましてありがとうございます。
駄文を思い出して読んでいただくなんて・・・恐縮でございます。
200年後なんて今の自分たちに関係ないと思うより、200年先も存在することを前提とした未来を想像する方がワクワクしますね!
私も素敵なコメントに励まされます!ありがとうございます!