一日一駄話 / SOU・SOUプロデューサー若林剛之によるたわいもない事
“茶室彼是(ちゃしつあれこれ)【51】”
数寄屋大工一家の箱入り娘&SOU・SOU傾衣の看板娘、寺田由のコーナーです!
前回の続き
金閣寺内にある「常足亭」が完成したのは2003年の春。
もともとあった常足亭を移築にあたり、解体前のお別れの茶会で施行を依頼された言います。
依頼にあたっては
「将軍にふさわしい席を、その他の一切を任せる。」
とお施主様は申されただけだったそうです。
日本文化の頂点、室町文化の象徴でもあり『鳳凰』がいる場所の茶室。
拝命を受けた祖父は当時、あまりの大きなことに悩みに悩んで熱を出して寝込むほどのことだったとのこと。
そして、考えたことは
「この茶室でどのような茶会が行われ、どのような道具が使われるのか」
と言うこと。
金閣寺について歴史的背景や関連する文化、芸術などを事細かに調べ上げ、自分なりの解釈を通して設計プランを組み立てたようです。
思案の末、祖父は長年ストックしていた材料を出すことにしました。
長年ストックしていたとは「ここぞという時のため」に大切に保存していたもの。
祖父にとっては我が子、宝物と同じです。
ですが惜しいと言うことはなく、中には10年以上も手元に置いたものもありました。
▲当時は内容が難しくて何も分からなかった資料。今となっては当時を窺い知る事のできる唯一のものです。
「金閣寺工法」と名付けた従来の工法とは異なる工法を用いて、何百年も残るであろう茶室に、後世の人たちが目にしたとて恥じる事のない仕事をする。
これは常日頃から祖父・父・兄が口を揃えて言う信念でもあります。
文字通り命懸けで取り組んだ仕事。
一生のうちに一度でもこのような仕事をさせていただけたことを祖父は大変誇りに思っていたに違いありません。
しかし、これに満足することはなく亡くなる直前まで仕事をし生涯現役を貫き通しました。
平成から令和という時代になり、今私が祖父の仕事を窺い知ることができるのは詳細な資料などがあるからですが、大人になってから、親交のあった方から祖父の話を聞く機会が今でも多くあります。
もちろん私の知っている優しい祖父と棟梁である祖父の顔は違いますが、いつも信念を貫き通した人であることに違いはありません。
※金閣寺茶室、常足亭は通常非公開でございます。
《つづく》
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それでは、また明日。
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6 件のコメント
スケールが壮大すぎて、薄っぺらな感想になってしまいますが、こんな大きなお仕事を成し遂げられたのちも、現役であり続けたという姿に感動します。
定年までの残りの年数を数えて、ため息ついている場合じゃないなあ・・・と。
日常に疲れた私たちを癒してくれるような空間を作り上げる方々に感謝と畏敬の念を抱くばかりです。
はな様
コメントをいただきましてありがとうございます。
定年後の人生プランを考えるのもまた一つの夢ですね!
祖父も老後の夢を膨らませていた時期もあったようですが、意に反して歳を重ねるごとに忙しくなってしまったようです(笑)
日本には生涯現役の方が大勢おられますよね!ますます元気に働いておられる姿には感服いたします。
まだまだ負けていられませんね!
『長年ストックしていたとは「ここぞという時のため」に大切に保存していたもの。
祖父にとっては我が子、宝物と同じです。
ですが惜しいと言うことはなく、中には10年以上も手元に置いたものもありました。』
素敵なおじい様。誇りですね。後世に残る金閣寺茶室も。
公開されることがあるならば、拝んでみたいです。
よっ!様
コメントをいただきましてありがとうございます。
私も未だ実際に目にする機会がなく、あの時に見ておけば良かったのに!と少し後悔しています。
もしも、何かの機会に公開されることがあれば私も金閣寺へ再訪したいと思います!
お祖父様、大変なご苦労だったでしょうね。
母はお茶の免状を持っており、若かりし頃にお茶席で金閣寺にも行ったことがあるそうです。(物忘れも激しい年齢なので怪しいところもありますが、もし確かならお祖父様が手がけられる前のお茶室だったのでしょう。)
私はお茶を習わなかったけれど、近くに住んでいることもあり、大文字の時などに金閣寺は行っていたので、大変興味深く拝読させて頂きました。
久しぶりに金閣寺に行ってみたくなりました。
chabo様
コメントをいただきましてありがとうございます。
嬉しいお言葉、大変恐縮でございます。
お母さまも金閣寺にご縁をお持ちでらいられるのですね。
やはり、特別印象深い場所でしょうね!金閣寺でお茶、うらやましいです!
なかなかキッカケがないと訪れる機会も少ないかもしれませんが、なんとも荘厳な気を感じる場所です。
今は少し人出も落ち着いているせいか、ゆっくりと楽しめましたよ^^