SOU・SOU日記 / スタッフがお届けする日記
“【SOU・SOU日記】”
足袋・下駄・手拭
数年前、ちょっとした着物熱におかされて
着物にまつわる本を読みあさりました。
その時に出会ったのが幸田文さんの本です。
久しぶりに読みたくなってエッセイ集『番茶菓子』を読みました。
その中に筆者にとって新年といえば「足袋・下駄・手拭」という話がありました。とても面白かったのでここでご紹介します。
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新しいのは足袋なのだ。こはぜが光っていて、底布がつっぱっていて、
ぶかぶかのような窮屈のような変な気持の新しさだった。
着物を着かえて、つぎに子供は顔洗いに行く。
内玄関には新しい下駄が揃えてあった。
一家じゅうの新調と云えば威勢がいいが、ふだん履だから板目という
ひどい桐で、安いのだ。
鼻緒が私には赤、弟には紺、母は青、女中さんは紫。
父の下駄は竹の皮鼻緒の庭下駄だった。
(--中略--)
いかにも新年の感があった。
鼻緒がきつく、桐の台がぎこちなく平ったくて、足袋と下駄とで
中の足まで調子が違ってしまった感じがある。新年の改まりかただった。
つぎに井戸端へ行って顔を洗う順序だ。手拭である。
そのころの手拭は藍一色の図柄で母の心づくしから私には花の柄、
弟には竹とか松の柄というように、子供の気に入るような選びかたがされていた。
(--中略--)
その井戸端で糊のごわつく新手拭を使って顔を拭くと、
まさに肌なれていない新しい触感があった。
改まった新年の威厳のようなものがあった。
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そういえば子供の頃は新しい服やタオルをお正月におろしていました。
少し気の早い話ですが、来年のお正月には…
と考えて今から楽しくなったのでした。
(北岡)