一日一駄話 / SOU・SOUプロデューサー若林剛之によるたわいもない事
“茶室彼是(ちゃしつあれこれ)【64】”
本日は日曜日!数寄屋大工一家の箱入り娘、寺田由のコーナーです!
すっかり秋になり、野道に咲く秋色の草花が夏の間に高揚した気持ちを落ち着けてくれるようです。
空気が澄み、帰り道には大きなお月様がとてもきれいに見えます。
「あー、秋だなぁ。」としみじみ。
そんなお月様の綺麗な季節、いただきものお菓子にこんなお菓子が入っていました。
とらや謹製 『残月』
半月の形をした生姜入りの焼菓子。
残月とは、有明の空に浮かぶお月様のこと。
薄っら浮かぶ白いすり蜜は薄雲を表現していとのこと。謂れを知るとなんとも風情のあるお菓子です。
季節にちなんだお菓子は和菓子の醍醐味でもあります。
「残月(ざんげつ)」と聞くと、もう一つ思い出すことがあります。
お正月に決まって尋ねるお宅にはお茶室がいくつかあるのですが、いつも通される応接間の手前には一際大きな和室がありました。
よく見るものより大きな床の間の柱には結柳。お正月の言祝ぐしつらえに、厳かな空気は言葉で言い表せない日本の美意識を感じる空間。
歳を重ねるごとに息を呑む思いで見ていました。
「このお茶室はいつ見ても、ええなぁ。清々しいわ。」と思わず言葉にすると決まって母は「あぁ、残月やなぁ。」と言うのです。
その時は気にもしていませんでしたが、「残月」と言うこばを聞くとその時の空気がよみがえります。
その母の言う「残月」がこちらのこと。
『茶の湯 こゝろと美 表千家監修 不審庵文庫編 河原書房』参照
茶道、表千家の「残月亭(ざんげつてい)」この茶室の作りを模した茶室のこと。
私たちがイメージする床の間よりもぐっと奥行きがあり、天井の高さにも動きがあります。
利休の聚楽屋敷にあった書院を写したものと言われており、いかにも厳かな雰囲気。
この残月亭は、上段の柱に太閤豊臣秀吉がもたれて突上窓(今でいうところの天窓)から月を眺めたことに由来するそうです。
ちなみにその柱は「太閤柱」と言います。
本やドラマで見る秀吉のイメージからは想像しにくいですが、戦国の乱世に生きて茶に精神世界を求めたロマンを感じますね。
その時に眺めた月と私たちが眺める月もきっと同じ月。
なんて・・・。
気持ち良い夜空、皆さんもぜひ秋の空を見上げてみてくださいませ。
《つづく》
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それでは、また明日。
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4 件のコメント
秋の月は、空気が澄んでかきれいに見えますよね。
いつもお茶のこと、色々を教えてくださりありがとうございますm(_ _)m
月見より団子に気が行く方ですが、ゆっくり月を眺めるのも良いですね。
夜は冷えてきますので、お身体には気をつけて。
よっ!様
いつもコメントをいただきましてありがとうございます。
私もどちらかというと、月見より花見よりお団子のタイプです・・・。
でも、両方あればもっと嬉しい!
朝夕と急に涼しくなってきましたので、よっ!様もぜひ温かくして空を眺めてみてくださいね!
ほんま、特に朝夕が秋を感じる今日この頃やねぇ。
今日も風情と趣きあるお話に癒されながら読ませて頂きました(^^)
今回の茶室のお話に、日本古来の木造建築の奥深さを改めて感じると共に、そこに住み、営んできた人たちの思い入れを知りました。
流石、数寄屋大工一家の箱入り娘!勉強になります♪
こうした語りも"SOU・SOU文化"のひとつなんやろうなぁ…。
これからも色々と勉強させてもらいます♪
追伸
ちなみに私のメールユーザー名、お気づきになられたでしょうか?(笑)
kazu-endlix様
いつもコメントをいただきましてありがとうございます。
嬉しいやらお恥ずかしいやら、恐縮でございます!
箱入りと言いましても、私の場合は“段ボール箱入り”の娘ですので(もう娘という年齢ではありませんが・・・)お恥ずかしい限りではございますが、いただくコメントが何より励みになりありがたいです。
もしかして、昨日がお誕生日ではありませんか?(違ったら申し訳ございません!またご来店の際に正解を教えてくださいませ。)